世界標準のハンドバイク
パラリンピック各国パドックを歩きつつ横目でハンドバイクのブランドをチェック。結果、ほとんど全てが「carbonbike.USA」製を採用だった。
圧倒的なシェアを誇る秘密は何?
輸入層代理権を持つテレウスの木戸泉さんに聞いた。
「カーボンバイクはもともとスイスで誕生しましたが、アメリカの競技用車いすメーカーのTopend社(ここでもアルミ製のハンドバイクを作っている)の経営者であったクリス・ペーターソン氏が買い取り、アメリカで大きく成長しました。ペーターソン氏は現在Carbonbike USAの共同経営者でトップ選手のサポートを行っています。
アルミフレームにとって代わりカーボンフレームが主流になったのは2016年のリオパラリンピックぐらいからです。
実際リオではメダルを獲得した選手の多くカーボンバイクを使用していました。」
「カーボンフレームのハンドバイクを作るメーカーはほかにもいくつかありますが、基本的に一部の選手に提供しているだけ。carbonbike社がカーボン製ハンドバイクのメーカーの中で最も普及し、かつ一般の方も買うことのできるメーカーであることは間違いありません。」
carbonbike社の工房
「カーボンバイクが実際にホームページに載せている発注書を見ると、採寸など必要な項目は非常に少なく、ほかのメーカーに比べて人間がマシンに合わせるような印象を受けます。オーダーシートは非常にシンプルですが、その人の障害に合わせて仕様は調整できます(握力のない人のためのスイッチなど)。最新モデルは標準装備でもカーボン製ホイールがつき年々価格が上がっています。」
「ハンドバイクは全長が長くシフターワイヤがハンドル操作の際に邪魔になるため、最近はSRAMのeTapを推奨しています。実際日本ではSRAMの無線をなかなか勉強できないので困っていますし、パーツ入手がしやすいシマノを好むユーザーもいます。日本では販売店から受けた注文を総輸入販売元(テレウス)がカーボンバイクに発注します。納期は3、4か月程度です。」
カタログモデルは4つ。
「R-2020」と「K1/K2」と「REVOX-33/36」は寝そべって操縦するリカンベントタイプ。上級モデルのR-2020は基本仕様完成車価格213万8000円。実際はレースに出るために軽量ホイールなどに換装すると価格は上がる。
「R-1」は上体を起き上がらせて操縦するニータイプ。H5で義足をはめれば一時的に立てる程度の選手が使う。
ハンドル部
健常者のペダルは左右位置が異なるが、ハンドバイクのペダル=ハンドグリップは左右が同じ位置にある。1991年以前はペダルが左右非対称だったが、手で漕ぐには左右対象の“シンクロクランク”が力を入れやすいのだ。
ハンドル部にはバックミラー、スピードメーターなどのアタッチメントがある。変速はほとんどがワイヤレスの無線式を採用。
バックレスト
「carbonbike」は非常にシンプルな作りで、ハンドバイクを作るときの採寸はあまりしない。ヨーロッパのメーカーはバックレストの角度などオーダー時に細かく指定できるが、アメリカ製はかなり大雑把でマシンに人間が合わせるようなイメージ。このバックレスト取り付け位置や角度は納品後調整するのだが写真のとおりフレームの上にバックレスト部分をかぽっと載せただけ。レース中は体重が掛かるのでわざわざ止める必要もないということだろう。もちろん写真に見えないところで2カ所ほどねじ止めしている。バックレストにはハイドロパックが内蔵されカテーテルで選手に接続する。ちなみに、ホイールは駆動輪26インチ、リヤ2輪は20インチ。
トップアスリートのための機材、見るだけでシビレます!