TOKYO2020のパラリンピック会場で9月2日、君が代のメロディーが心に染みた。パラ会場で11日間をボランティアとして過ごしたなかでも一番の思い出。
やっぱりスポーツイベントでの日の丸と国歌はひときわ染みる。
杉浦佳子(50歳/楽天ソシオビジネス)はマスコミにパラ開催前からメダルに近い選手として騒がれたがトラック競技では惜しい結果に。だが、得意のロード競技では二冠に輝いた。いやはや凄い! 素晴らしい!
写真はTCF(東京都自転車競技連盟)普及委員会の子どものための自転車学校に遊びに来てくれたときのスナップ。彼女は薬剤師として自転車学校の救急箱に詰めるアイテムを厳選してくれた。擦過傷で使うワセリンは小詰めで使いやすい。首にかけたメダルは2017年のパラサイクリング世界選手権タイムトライアルと、翌18年の世界選手権ロードレースも制したときのものだ。
静岡県掛川市が故郷だけに地元の静岡新聞は掛川出身選手の動向を事前から事後まで微細に取り上げていた。東京・銀座では号外が配られてお祭りモード。いくつか読み比べると記事がサラリとスマートだったのがBBCニュースだった。
佳子さんのパラアスリートの横顔に触れる。5年前に健常者としてロードレース中に転倒。高次脳機能障害と右半身にまひが残った。2017年にパラサイクリングに転向。障害程度のクラス分けが当初はC1-2だったが現在はC1-3で確定している。
僕は9月2日のタイムトライアルのときボランティア業務でコース外にいたが、レース情報は把握していたので君が代が耳に入ったときはジ〜ンときた。トレーニングで重いギヤを踏んで左ヒザ(股関節?)を痛めたと伝え聞いていたからトラック競技の雪辱を払って勝った喜びは格別だろうなと、心に響いた。
翌3日のロードレースは富士スピードウェイを拠点に13・2kmのコースを3周するものでスピードウェイを出て一般道を巡りスピードウェイに戻る。僕はマーシャルとして一般道の下り坂&左カーブのポイント20でフラッグを振りながらマーシャルとしてつぶさに観察できた。雨なのでクリッピングポイントのグルーチングでスリップが起きないか心配だった(前日のTクラスでは危うく突っ込まれそうな一幕も)が杞憂だった。
佳子さんは3回とも先頭集団の頭で安定のラップ刻み。1周目は集団先頭にいてレースを支配。2周目も9人の先頭集団先頭で約13分のラップタイム。3周目は3人でオーストラリアとスエーデンと中国選手を引き連れて約13分のラップタイムで通過。年の功(失礼)か、格が違うみたい思えた。そしてスピードウェイの終盤、付き一のライダーたちを上り坂で狙い定めていたようにアタックして振り切って栄光をつかんだ。
レース運営側の立場であからさまに喜びを表明するのはイケナイが、立哨ポイントで無線やweb速報で地元ボランティアも警察官もその場に居合わせた誰もが大いに喜んだ。ニッポン金メダル、それも二冠達成の快挙!!
テレビ報道で彼女がコメントした「最年少記録って二度とつくれないけど、最年長記録って作れますよね」のウイット溢れる名言は語り草。僕は日本の自転車競技史上でも稀なレース現場で祝杯のスパーリングワインを買わねばとウキウキしてしまった。
自転車学校photo●比護隆一