梅雨前線が北上しているというけれど、房総半島はまだ梅雨前です。海にくると蒸し暑さがない。
朝までの雨で、防風林の小径は湿っている。オンショアの風で片手にもったサーフボードが砂丘の手前から煽られる。冷たい海風で砂丘に自生する草も陸地のほうに流れている。
釣り人の姿あるけれどサーファーはいない。波が低いから。
それでも折り畳み椅子に座って、しばらく海を眺めた。海藻が溶けたような緑色。
昨夏の強い日差しと透明度の高い海を想う。でも、この海もそれなりに気持ちいい。
小さいけれど波はある。波が割れやすいポイントに向かって歩く。
海に浮かぶゴミは前夜の風と潮の影響で、房総半島と三浦半島を行き来する。
波打ち際に、プラスチックゴミがたくさんある、海藻や魚網からはずれたブイもある。
ヘソの辺りまで歩いてから波のうねりのなかで、ボードに腹ばいになって両腕でパドリングする。
浮遊するちいさな海藻が口に入りそうだ。
いつものビーチ、右手は三浦半島でその手前、浦賀水道航路を通る大型貨物船や自衛艦が遠くに見える。左手は東京湾観音の後ろ姿。
うねりの頂点から落ちるときにパドリングで漕ぐ。背中で波が崩れる音がする。
次のうねりに向かうときの海は滑らかで目に入るのは波と空だけになる。
うねりからうねりへと漂う時間もいい。
うねりにまかせてボードにつかまっていると、波の上から下に、また上に漂っていられる。
うねりのなかで過ごす時間は静かで、煩わしいことがない。
サイクリングのロングライドで、脚がくるくるまわっている無負荷な走りと似ている。
動いているけれど、動いていない。
漂っているだけでいい。