パラリンピック執務の最中は個人的な写真撮影はNG。だから執務以外の時間で顔見知りになった選手やスタッフに了解を得て機材を見せてもらった。
なんと言ってもHのハンドバイクがパラ機材の花形だ。Tのトライサイクルは専用に作られた車体と、普通のロードバイクにコンバージョンキットで後ろ2輪を組み付けるタイプがあった。どちらもcoppiは門外漢。だからHはハンドサイクルや車椅子を取り扱うTERREUSの木戸泉さんにご説明をいただいた。
テレウスホームページ www.terreus.co.jp
H4 ヨネス・ファン デ ステーネ選手(ベルギー)の「SOPUR」(ソプール)製ハンドバイク。
ソプールはヨーロッパの車いすメーカー。アルミフレームのハンドバイクを作るがこのカーボンフレームはドイツのBecker Carbonというフォルクスワーゲンやエアバスなどのカーボン部材の作成に携わるメーカーと共同で作ったようでおそらく一般向けには販売されていない。トップアスリート使用率が高いcarbonbike社製と比べるとよりフレームの面積が少なく軽そうだが、フォークやクランクはアルミなので重量面ではとんとんでしょうか…。
H3選手のハンドバイク。「CYCLONe C7」。フレームもフォークもカーボン製。
女子H5アナ マリア・ビテラル選手のイタリア製「dallara」(ダッラーラ)のハンドバイク。元々は90年代にF1ドライバーで事故に遭い後にハンドバイクでH5で活躍のアレッサンドロ・ザナルディ選手のためにレースカーを作っていたコンストラクターがハンドバイクを手掛けたものだ。フルカーボン製で、こちらも一般販売はしていないと思われる。残念ながらアナ マリア・ビテラル選手はDNFでした。
イタリア製「Maddiline」(マッディライン)のハンドバイク。テレウスでも取り扱いがあるが、フォークがアルミ製ということもあり、最近のお客様はフルカーボンのカーボンバイクを購入されてしまう。リヤホイールはWheelsbikeというイタリア製のディスクを使用。
H2 フロリアン・ジュアンニ選手(フランス)の「carbonbike.USA」。ロードで優勝した選手だ。このチェーンリングは面白い(coppi注釈:ドイツの超軽量なTHM製カーボンクランクセット「CLAVICUL SE」に楕円形チェーンリングを組み合わせたスペシャル。ペダリング効率を追求できる反面、チェーン落ちのリスクが高まる)。車体はマットブラック、フレームやフォークの形状はカーボンの最新式。H2クラスだと頸椎損傷で握力のない人も多く、彼の場合は腕は装具で固定、シフターとブレーキはフレームに取り付けて、腕で操作している。
移動用のアタッチメントタイプハンドバイク(フル電動)。
車椅子の前に取り付けて、3輪車になる。日本だと法律の関係でフル電動のものは公道の仕様が認められていない。海外だとかなり普及しているため、日本でも認められれば車椅子のモビリティがもっと向上するのにと思われる。
ここからはcoppiが解説。フランスのH5選手が2位になったレースで使った「Carbonmaster FSP」。カーボンマスターはフィリピンにある産業用機器製造業社で、建設用重機や足場や電線のカーボンブラシなどを作る他に、エンジニアプラスチック素材も扱うノウハウを持つ。
ディスクブレーキ仕様の姉妹車は「Carbonmaster R」。
普通のロードバイクに別付けするconversion kitを組み付けたトライサイクル(trike)。後輪にキャンバー角が与えられコーナリングでライダーが車体の内側にぶら下がるようなハングオン姿勢で曲がる。ちなみに高級なトライクには昔からデファレンシャルギヤが組み込まれてあり左右後輪が差動して曲がりやすくなるシステムを装備することがある。
この2台に付いているキットは不明だが、上のキットはGeorgeA Wright and Son Ltdが初めて特別製作したコンバージョンキットでUCI認可済み。
この製作会社の中心的取り組みはモーターサイクルレースでMVレーシングチームを運営している。
https://shelleygautier.wordpress.com/new-race-trike/
写真はWT2のモニカ・セレダ選手が下り左コーナーを攻めて曲がるシーン。目の前で見たが激しい減速で曲がっていった。きれいなアウトインアウトで後続をブッチ切った。これもコンバージョン式の後付けで、リヤスプロケットやディレーラーなどのドライブトレインは中央にある。
次回はここでも少し触れたがハンドバイクの世界標準機材と言える「carbonbike.USA」を紹介。これはテレウスが日本総代理店だ。乞うご期待!
取材協力●木戸 泉(テレウス)