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長距離を自転車でいかに効率よく走れるかを説いたのが、シクロツーリズムの父と呼ばれた“ヴェロシオ”(1853~1930)ことポール・ド・ヴィヴィ。

南フランス生まれの彼は、絹産業で働いた後に1886年にサンティエンヌでイギリス製自転車の輸入を始め、1988年に自転車雑誌『Le Cycliste』誌(後に『ル・シクロツーリスト』の概念を生んだ出版物)を創刊しました。

Paul de Vivie dit Vélocio (29 avril 1853 – 4 mars 1930) 

ヴェロシオは熱心な読者たちと生涯にわたりサイクルツーリングを楽しんだ

来年6月に長野・千曲市で開催される『Japan Bike Technique 2026千曲大会』(本HP右上リンク参照)に向けてcoppiは実行委員会代表として仲間と細則を詰めている段階ですが、コアメンバーはみんな、ヴェロシオの志を継ぐ気持ちを抱いています。

ヴェロシオは編集長を務めたLe Cycliste誌で、自ら長距離ツーリングでテストした実践的機材紹介の記事を書き続け、読者のみならずフランス自転車界に多大な影響を及ぼしました。その功績は、長距離自転車旅の遊び方(タンデムを含む)や、オートクチュールの自転車作り、長距離走行の規律の提唱者、そして変速機のメカニズムを洗練させたことです。

京都にグランボアというショップがありますが、グランボアはヴェロシオが自転車関連の仕事を始めたサンティエンヌにある峠の名前。ヴェロシオは、変速機を使えば山岳地も上りやすいと根強く主張。山岳路での変速機評価は第一次大戦以降、『ポリー・ド・シャントルー』という人気イベントに引き継がれました。

日本では“ポリー”と聞いて『ポリー・ジャポン』を連想するマニアが多いでしょうが、愛好家が集まって特定のテーマで旧車のレストアを競い合うポリー・ジャポンのルーツである『ポリー・ド・シャントルー』(マルチギヤ・スピード選手権)は、1913年にシャントルー近郊で初開催。サンティエンヌの峠グランボア(現在の表記Col de la R é publique)はヴェロシオが興したTCF(フランス自転車ツーリングクラブ)会員の聖地として崇められています。

 

polyの時代変化

ヴェロシオ所縁のイベント「poly」は1919年〜1930年代までが長距離走行する変速機や特殊工作が施された軽量自転車でその技術を実走で示すランドヌールの世界。やがて短い距離の周回レース=CRITERIUMになった。ロードレーサー、サイクリング車、タンデムのカテゴリーはあったが実走で示される<競争する自転車を観戦する興味>に変容。1960年代には完全にROAD RACEに変質

PHOTO©️ N et B viennent du site Gallicaより引用

変速装置は最初、後ろのハブ左右に取り付けた2つのコグに手動でチェーンを掛け替えたが、やがて複数コグの上でチェーンが移動し、今では電動変速(ツール・ド・フランスでは1937年まではディレーラー使用禁止)

峠を上るサイクルツーリストに向けた7つの戒め

ポリー・ド・シャントルーは、タフな走りで自転車の性能を証明するイベントで、高低差2000m距離103km、タイムリミット5時間で競われ、常勝したのが高級自転車ビルダーの手によるルネルセでした。ルネルセ、アレックス・サンジェなどを団塊世代に属する日本の愛好家は崇めていますが、そうしたハンドメイド自転車=オートクチュール自転車の文化を築いた自転車ビルダー達が21世紀の今、生きていたらどんなスタイルの自転車を製作するでしょうか?

『Japan Bike Technique 2026千曲大会』は第3回で、第1回のJapan Bike Technique(以下、JBT)は、京都のグランボアを営む土屋郁夫氏が、2017年にフランスのConcours de Machines(軽量化選手権)に参加し、<自転車製作者による自転車製作者同士が切磋琢磨するイベント>に惚れ込んで、それを日本で実現しようと2019年に長野・高山村で興したのがJBTの始まりです。

第3回JBTは、基本的にタフな走りで自転車の性能を証明するイベントで、お題である “理想の旅自転車”により製作者達が自作車を持ち寄り、1日目はオープンなステージでプレゼンし、2日目は走行&課題をクリアして競い合うイベント。今回から、既存フレームをベースにカスタムした愛好家にも門戸を開きます。

  

第1回JBTの会場風景

JBT2026千曲大会が、天国に召されたルネルセ、アレックス・サンジェの関係者らに祝福していただけるよう、我々実行委員会メンバーは頑張ります。

アクティブな日本の自転車界に光を!!

<ご参考>

書籍「Vélocio」

https://mai.saint-etienne.fr/paul-de-vivie-dit-velocio-levolution-du-cycle-et-du-cyclotourisme

書籍「Dancing Chain 」( History and Development of the Derailleur Bicycle )5章にヴェロシオ関連記事あり。

ウィキペディア「Vélocio」 https://fr.wikipedia.org/wiki/Vélocio

書籍「ハンドメイド自転車の黄金時代」ISBN978-4-7661-2192-6C0075 ジャン・ハイネ/ジャン=ピエール・プラデーレ著 中堀 剛 日本語版監修 グラフィック社刊

アイズの独り言「コンクールマシン参戦記」 https://grandbois.jp/blog/20170709/19699/

Post Author: coppi