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日本では“だるま自転車”と呼ばれるオーディナリー(ORDINARY)型の先駆けとなったのがイギリスの「アリエル」(ARIEL)だ。1870年にジェームス・スターレーとウィリアム・ヒルマンがベロシペードの車輪とギヤ装置を改良して特許を取得。そのライセンスを受けてコヴェントリーの会社が1871年に生産。前輪が大きく、後輪が小さい初期のハイホイーラー誕生だ。前後の車輪が大小のペニー硬貨が並んだように見えたので“ペニー・ファージング”(PENNY-FATHING)とも呼ぶ。

アリエルの特徴はフレームとパーツが金属製であること。特徴であるタンジェント組みスポークは1874年に特許を取得。スポークを交差して組んでホイール強度が補強されペダルを漕ぐ力がリムに有効に伝わった。スポークは個別に張力を調整できるので整備も容易。

アリエルをはじめとする初期オーディナリーはよく売れたので、イギリスでは異業種が自転車製造に参入した。鍛治職人の手作りでなくビジネスとして成立するようになり、大規模な工場が建設されアメリカや世界中に輸出された。前輪はよりスピードを出すために大型化したので、うまく操縦できないと前方に頭から落下した。だが、スピードとスリルに溢れる魅力は大きく、レースは盛況だった。

やがてジェームス・スターレーの甥であるジョン・ケンプ・スターレーが今日的なダイヤモンド型フレームで前後輪が同じ大きさのセーフティー型を登場させたが、1880年代はスピードが出てスリルのあるハイホイーラーがまだまだ人気を保った。

イラスト:「オランダの自転車風俗画」ニューサイクリング1966年Vol.4より引用(元資料:©️1949:Lemet.Hilversum.Holland)

参考文献:「50のアイテムで知る図説 自転車の歴史」原書房刊、「19世紀イギリス自転車事情」共和国刊

Post Author: coppi