
風がめっぽう強い日、「サイクルツーリズムについて話して」と頼まれて、ちょっと長野県上田市に行ってきた。
時間通りに上田市合同庁舎の会場に入り、近隣の役所や観光関連の人たちに、もう10年も関わってきたエロイカ・ジャパンのイベントを切り口になんとかお話したものの持ち時間を持て余し、質疑応答でしのぐ。でも、会合終了後に数人から共感の声と、さらなる質問もいただけた。しかし、反省仕切りでした。
なぜなら気心が知れたサイクリング関係者との飲み会で、自分が“長野県・地域”への理解が申し訳ないほど足りなかったのを痛感。概論を語るだけの役目はできたが、各論にはおいそれと口は挟めない。
長野県への理解不足は、“真田の郷”に言及したときに露呈。
上田市での会合だから、上田城、武田信玄、忍者、山城、などの観光資源が頭に浮かんだ。で、思いつきで「菅平に向かう道に真田の郷があるね。坂だけれどレンタルの電動アシストで行く裏道ルート設定はどう?」と口走ったら、「裏道あるけどキツくって健脚でも大変」、「真田の郷はすでに無料eバイクのレンタルがある。現地で借りればカンタン」など、事情通たちに釘を刺された。
その後、TV天気予報を観て改めて驚いた。山脈・谷・河川によって長野県はじつに多様な風土・気候で複雑に織りなされている。それは天気予報で一目りょう然。ビジネスホテルでNHK総合・長野の天気予報をチェックすれば6時58分からエリア別に映され始め59分まで、7画面40地域名がずらり。愕然。
ある場所とある場所を繋ぐルートに地形や標高がダイナミックに絡む。だから都会暮らし・平野暮らしの感性ではサイクルツーリズムの具体的な提案なんて出来やしない。
ともあれ、令和元年から推進されたJapan Alps Cyclingのブランド化は効果を挙げられずの大風呂敷ではないか。反面、地域毎には小規模でも志があり温かいイベントは多い。
エロイカも最小は小さなサイクリングの集まりだった。創設者は利便性や経済優先の開発で郷土が疲弊することに心を痛め、仲間で納屋にある自転車を持ち寄り未舗装の白い田舎道(Strade Bianche)を走ろうと声がけをした。環境問題への問題提議がきっかけ、それが時を経て大きな経済効果もある国際サイクルイベントに成長した。長野でも、ブレずに、ゆっくり、丁寧に、サイクルツーリズムを育てるといい。
とはいえ、長野への理解が浅はかだった。恥ずかしかった。
高速バスで帰京するとき、車窓に独特な山容を誇る妙義山が現れた。好きな景色。これを見るためだけに、妙義山の周辺をサイクリングしたいと思う。コアな自転車マニアなら、走っていれば楽しい。でも、サイクリングがらみの観光で人々を誘致するには、名所、話題、グルメなどの魅力が必要だ。春になったら改めて、東京から埼玉、群馬、長野へとペダルを踏んで辿ろうと思った。