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マットで上半身ストレッチをする選手を観察した長野車連の湯原正行コーチが「可動域のチェックをしていますね」と話しかけてくれた。

8月18日の長野県松本市・美鈴湖自転車競技場。パラリンピックに向けてフランスナショナルチームが事前合宿練習を14時から16時の2時間公開した。障害者施設に勤務する湯原コーチにならお互いにパラの機材と選手見学が参考になると考えて同行をお願いしたわけ。感謝。

全国的に雨続きなのに奇跡的に晴れたこの日、Cクラス(麻痺や欠損の選手が健常者と同じ自転車で走る)とBクラス(視覚障害選手がタンデムの後ろ=ステイヤーとして走る)がトラック競技場で調整をする。ロードは美鈴湖からクルマで30分ほどの四賀支所が拠点。Hクラス(下肢障害などにより手でペダルを回すハンドサイクルで走る)の機材は車椅子マラソンのような形だ。四賀地区は山間部とはいえ比較的高低差がなくて周回練習するには都合がいい。

 

湯原コーチは2001年JCFスプリント種目ランキングトップに輝いた人で長野車連・自転車学校で子供たちにメインで指導する立場。2000年にはニューカレドニアの6日間レースに招待され、そこで11〜12歳からの子供たちが固定ギヤのトラックレーサーでマディソンをしている様を目撃して「自転車競技のレベルが根底から違う!」とカルチャーショックを受けた経験の持ち主。だからこそ、子供たちへの指導も丁寧だ。

それにしても爽やかな微風と青空。気持ちがいい。タンデムの後ろに乗る視覚障害のステイヤーが上体の肩から腕や首まわりをゆっくり動かしている。その横でパイロットを務めるフランソワ・ペルヴィス選手が“悟”の漢字が目立つ孫悟空ジャージに着替えていた。「フランソワは1,000mが58秒ですからね、筋肉も凄い」と湯原コーチともども目を見張った。さすが、1kmで世界選手権三連覇、リオ五輪チームスプリント銅メダルである。「フランスの本気が伝わってくる」と湯原さん。

だが好事魔多し、出走機にタンデムをセットしてのスタート直後、バッ!!と高音とともに黒い破片が飛び散った。ハンドル部のプラスチックが破断。さらに数分後、音はしなかったがすぐにホームストレッチに戻ってきた。一体どうしたんだ?! 翌日に判明したのだがフリーホイール内部が破損して動力伝達が不確かになった。幸いにも予備ホイールで対処できたそう。海外遠征には限らないけれどリスクは付き物ですね。

ロード練習の現場へ向かうのがすっかり遅くなり、到着したときは撤収の最中。バンに積み込まれたハンドバイクはもちろん、カーボン素材のスペシャルに見えた。近づこうとすると係員から「近寄らないで」と阻止される。コロナ対策の一環だ。ロードのコーチとしてパトリック・モイザス氏が帯同しているので彼に一言だけあわただしく挨拶。この人は2002年から3年連続ハンドバイク世界チャンピオンになりドイツ国境に近い町で地域スポーツクラブを興し、ハンドバイクのリーグ戦をプロモートするなど興味深い人物としてジャーナリスト仲間から紹介された。そのうち書くつもりだ。

 

公開練習が終了しても美鈴湖ではまだトラックチームがタンデムのトラブル対応でピリピリしていたが、子連れの応援ファミリーは女子選手たちと和やかに記念撮影。競技場のポールにはフランス国旗がきれいになびいていた。

遠巻きに練習を見ていた湯原コーチ、「女子選手も大きいギヤを踏んでいるのでゆっくり漕いでいるように見えるけど速い。色々と基本に忠実なのがフランスチームと感じました」との由。僕も湯原さんも自転車学校ではフランス競技連盟のメソッドを基本的に使っている。そんなこともあり、フランス頑張れ!

Post Author: coppi