ベテラン・カテゴリーで最も走る人物をご紹介します。
1960年生まれのT.Y.さんは、複数台の動態保存コレクションを所有。なんとシングルギヤでパリ〜ブレスト〜パリ(PBP)の完走を目論む漢だ。柔和な笑顔の下に、諦めない強い意志が潜む。
T.Y.さんは現在、「第3次マイブームが到来して帰ってきた」と笑う。
第1次マイブームはまだ十代の中・高校生時代だった。千葉・柏市にあったショップ「シクロウネ」(3Rensho CYCLONE)でスポーツ車を購入し、朝練に参加して競輪選手たちと励んでいた。その後、釣りに没頭して自転車趣味から離れる。
第2次マイブームは三十代のころで、90年代はMTBブームであったが「SANNOW」のランドナーを購入して走り、今もあればと悔やむほどロードレーサーも数台コレクションした。
生業はモータースポーツ業界でレーシングカー製造。でもフライフィッシングへの興味がつのり、またも釣り趣味に戻った。
ところが、五十代になり第3次マイブーム到来。若いころからスポーツバイクに触れてペダルを踏むスキルはカラダの髄まで染み込んでいる。「英国の自転車がずっと好きだった」のでまず手に入れたのは1952年式「BATES」、内装3段ギヤ付きのいわゆるクラブモデル。山形に滞在して自動車デザイナーのケンオクヤマ氏の工房でワンオフのエキゾチックカーkoda57ボディをカーボンファイバーで作る仕事をしていた当時、BATESで蔵王スカイラインをヒルクライムして80kmほどを走り、「意外に走れる」という感触を得たからで、2019年のパリ〜ブレスト〜パリ(PBP)に挑戦する目標を立てた。
PBPは90時間の制限時間で1,200kmの距離を走るブルベ。ブルベの中でもPBPは4年に1度開催される最高峰の大会。参加するには開催年の1月から7月までにBR200、BR300、BR400、BR600と距離の異なる4大会を完走してSRという認定を得る前準備が必要。
T.Y.さんはベテラン時代の自転車で果敢にブルベをこなしていった。好事魔多し、もうすぐSR認定という5月に1927年製プジョーでトンネル内を走行中に追突事故。諦めないT・Yさん、回復して雨のBR600に、安全性最優先でディスクブレーキ付きのファットバイクで出走したがギヤはやっぱりシングル仕様。結果はDNFだが、2020年もシングルギヤの1920年製アリシオンで沖縄のブルベをまた走った。決して諦めない。
しかし、諦めないぶりの凄いのは昨年の千葉。そのエピソードは次回に乞うご期待!
写真は愛用のAUTOMOTO(1920年代)にまたがるT.Y.さん。これでBR400沖縄を完走した
photo©︎ MASAYUKI rocky TSUYUKI&coppi