江戸から明治時代の外国人居留区で読まれていた「THE JAPAN PUNCH」は、イギリスのジャーナリストであり画家のチャールス・ワーグマン氏が出版したものです。雄松堂書店から10冊組み11万円でその復刻版が販売されました。
ワーグマン氏は「イラストレーテッド・ロンドン・ニュース」特派員として来日前は中国、香港で漫画入り記事を書き、1861年(文久元年)に日本に赴任して横浜に落ち着きました。そして外国人たちの慰めにと、ジャパン・パンチを作ったそうです。創刊号は1862年(文久2年)5月と推定され、原本は十数枚の美濃紙を和綴にして横25cm、縦35〜36cmの寸法。1887年(明治20年)3月号まで、休刊期間も挟んで四半世紀も続きました。
1868年(明治元年)の江湖新聞にジャパンパンチが、「西洋新聞紙中、ポンチというものあり、是は鳥羽絵風にて、可笑しき絵組を取纏め、其の中に寓話ありて、日本の判じ物也」と取り上げられた。そこから、明治時代の漫画を“ポンチ絵”というようになったわけです。画家であったワーグマン氏は「明治初期の油絵画家、漫画家、日本画家たちを指導して影響を与えた」と羽仁五郎氏(歴史家)が記しています。
分厚い10冊の復刻本をパラパラとめくると居留地外国人の生活がモチーフとしてたくさん描かれ、競馬、乗馬、玉突き、クリケット、ダンスパーティ、射撃大会などありますが、自転車(CYCLE)が登場するのは2カットでした。
掲載した絵と同型のTricycleはシマノ自転車博物館に所蔵されています。イギリスのラントン型だそうで、乗員はシートに座り両手で左右のレバーを前後に動かすと後輪が駆動します。しかし、ラントンというモデルをどんな会社が作ったのかは不明です。