2日間にわたり南房総でビンテージ自転車を楽しむ「FERRO MARI e MONTI」、2019年11月の大会は快晴だった。光る海と亜熱帯の緑に恵まれた自然、素朴な田舎道をたどってエイドを巡る。
T.Y.さんは1907年製の英国車チャタリーで、平坦な舗装路を快走していた。何台か所有するベテラン・カテゴリーのなかでこの自転車は、径が大きい700Aのタイヤだがリムは細いトラックレーサー用を装備、ギヤはもちろんシングルだ。
引き上げ式ロッドブレーキの付くハンドルステム部にはルーカス製の大ぶりなベルが付き、安全装置を完備しているから100年前の自転車でも神奈川から自走でこの大会に参加できていた。
だが、「ふらつくなぁ」とT.Y.さんの安全センサーにハザード情報! なんと、見ればステムの首の辺りにクラックが入っている。
幸いにしてフラットな直線路でのハザード、コーナリングやスピードが出る下り坂でなかったのは不幸中の幸い。Uターンして道を戻り始めたら視界にクルマ修理の店があった。
溶接機もある。さっそく飛び込んで「金属の部品にクラックが入ったので修理をお願いします」と言ったが、「自信がない」と店の対応。ならば「自分でやってもいいですか?」と食い下がると許可がでた。
このホームページ記事の2月14日掲載「ツール・伝説 最初の悲劇のヒーロー」をお読みいただきましたか? あのエピソードが南房総で再現。T.Y.さんはライド仲間に見守られるなか、借りた半自動溶接機で見事にステムを溶接し、ゴールに戻れた。
「FERRO MARI e MONTI」で、これは語り継がれるべき伝説です。
写真はCHTER LEE(1907年型/イギリス製)の溶接修理部分
photo©︎MASAYUKI rocky TSUYUKI&coppi