ヒルクライム大会で、国道をコースに使うのは相当にハードルが高い。
それをクリアしたのが9月11日(日)に長野県で初開催の『志賀高原ヒルクライム』。距離13.1km、平均勾配5.6%、標高差743mの大会スペックだが、渋峠=標高2,152mをゴールとする爽快スペクタルな景観が魅力。
国道292号線の志賀高原サンバレー〜万座三叉路ゲート間の道路規制は午前5時〜12時00分だった。
ちなみに人気ヒルクライム4大会コースはすべて県道利用だ。
『Mt.富士ヒルクライム』
山梨県道707号線富士河口湖富士線(スバルライン)で富士山五号目までの全長25km。平均勾配5.2%、標高差1,270m。道路規制は午前3時〜午後1時45分。
『マウンテンサイクリングin乗鞍』
長野県道84号線(乗鞍エコーライン)を使用。距離20.5km、平均勾配6.1%、標高差1,260m。道路規制は午前6時〜午後0時30分。
『榛名山ヒルクライムin高崎』
主に群馬県道211号線(安中・榛名湖線)を使用。距離14.7km、平均勾配6.0%、最大勾配14%。道路規制は午前4時〜午後1時30分。
『まえばし赤城山ヒルクライム大会』
群馬県道40号線を使用。距離20.8km、平均勾配6.4%、標高差1,313m。道路規制は午前6時30分〜午前11時30分。
人気4大会とも県道である。
- シガヒルのスタート地点午前4時、星空の下で当日の天候確認、TDとして大会開催最終判断をした
いずれも時間規制は半日。レース最後尾が通過すると道路封鎖が解除されるのが通例だ。レース運営側は、安全のために道路規制時間をしっかり確保したい。だが規制される側の住民や企業の道路利用者は不便が生じる。観光地であれば一過性の車両らは迂回を強いられる。そういった不便を和らげるために、一時的規制解除という策を講じる。
東京オリンピック2020の際に、coppiは東京の国道16号線に近いポイントで立哨執務についた。現場での一時規制解除は、ロードレースの流れを把握できる審判資格を持つ立証が判断して、警察官に信号機を手作業で操作してもらい、自衛隊員やボランテイアの協力で交通の流れを動かし、止める。
志賀高原ヒルクライム(以下、シガヒル)でも同様、立哨スタッフが要所でクルマの前にバリゲートを築いて通行を止める。レースの動きを無線情報で得た大会本部では、あらかじめ策定した一時規制解除をする。デキル大会本部は、実情に応じて一時解除時間を前後に移動運用。だが、これが微妙なのだ。
- 大会前から道路上に立て看板を設置し、道路規制チラシを下り、観光施設には挨拶まわりをして規制情報周知をした
一時規制解除時間、あらかじめ地元住民などには発表されているので、実情に応じた運用はあらかじめの時間を念頭に動いていた人には寝耳に水の事態。それで軋轢が生じる。
ヒルクライムは下り管理がキモ
シガヒルに限らず、ヒルクライム大会で運営側が神経を尖らせるのはレース後の下りにおける事故。最近は長野県内のトライアスロンで、九州でのインカレでも下りコーナーで死亡事故が発生。それを踏まえて長野県警はシガヒルの下りを視察・監視するために白バイ、パトカー、覆面パトカーを派遣してきた。大会関係者に緊張感が走る。
下りの安全管理は、先頭ライダーと最後尾ライダーに約100選手を挟んでもらいスピード抑制、手信号厳禁の声出し注意喚起をお約束にして行なった。いわゆる護送船団方式の下りで、3分間隔の8ウェーブ。途中にAED搭載のメディカル・ライダーが入った。
緊急事態! 下り運用が始まるまでの待機時間帯に、1台のクルマが立哨の静止を振り切ってコースに侵入。その排除にヤキモキしたが、幕を閉じれば下りでパンク停止が一件だけで参加者は全員無事に下山。シガヒル大成功だった。
- 第1回シガヒル、コースレコードは37分26秒269。平均20.99km/h。総合勝者には米俵が贈られた
「警察に褒められました」と、大会本部で司令塔を務めた人が、青空を見上げてうれしそうに笑った。