なんだこりゃ?!
2020東京オリンピックのトラック競技をネット中継で観戦していて驚愕。イギリスは本当に実戦投入してきました、ロータスの新エアロバイク。
作ったのは英国ランカシャー州のホープ・テクノロジーだ。MTBやトライアル好きならディスクブレーキのメーカーとしてホープをご存知のはず。強力な制動性能だけでなく美しいCNC加工も魅力です。そのホープはカーメーカーのロータスとブリティッシュサイクリングと共同して2019年10月にこのHB・Tトラックバイク=LOUTUS hopeを発表。その性能はイギリスチームの女子団体追抜きの世界記録樹立で実証された。
ロータスのエアロバイクと聞けばレース好きなら想起するロータス・タイプ108。そう、不出世のタイムトライアルスペシャリストであるクリス・ボードマン選手はこれで1992年バロセロナオリンピックの個人追い抜きで金メダル、1993年や1996年にアワーレコードで世界記録更新(タイプ110)をしたが、その名誉な記録が2000年にUCI(国際自転車競技連合)から「伝統的な自転車の形態とかけ離れている」との理由で剥奪された。自転車界の有名な黒歴史である。ボードマンは2000年に引退して、自転車レース解説者や自らの名を冠したブランドも持ち、さらにブリティッシュサイクリングと関連してブラッドリー・ウィギンスのコーチも務めている。
そのロータスが2020東京オリンピックで復権、製造元のホープは2016年リオオリンピックで既にイギリスチームに対してサーベロのブランドでカーボンフレーム供給した実績があった。それが進化してロータス・ホープとなったそうだ。ロータス・ホープはカーボンフレームの金型を自社で必要に応じて修正できるから選手の個性に応じてスケルトン変更ができる。また、3Dプリンター技術でパーツ類も作れる(フォークはアルミ素材、他のパーツはチタン素材で軽量化、ステムやハンドルバーの内部構造は格子構造で軽量化と剛性追求)。
そして何より革新的なのが、フォークとシートステーをホイールから離すデザイン! 特にフォークまわりのデザインはライダーの足の周りに空気の流れを向けることができる。これはレーシングカーのダウンフォース抗力を生み出すデザインの考え方を自転車に応用した奇策だ。何たる革新!
前回の黒歴史が繰り返されないように、UCIルールのカーボンフレーム3:1比率規定や、フレームとフォークチューブの寸法規定をクリアし、ロータス・ホープは少量の販売も予定している。
ちなみにオリンピックこぼれ話、「女子の小さいフレームはGoProカメラがシートピラーにあるしで出走機のクランプするスペースが少ない。棒状のアダプターに付け替えて対処しました」との由。
この革新バイクはホープ・テクノロジーが作った。だがその背景にはクリス・ボードマンの懲りないジョンブル魂が息づいている。
Hope HB.T specification
- 重量: 7.5kg(サイズ8)
- フレーム重量: 1,500g
- フレーム:カーボンファイバーと3Dプリントチタン、Hope Technology製、3Dプリントパーツはレニショー製
- フォーク:ロータス製のカーボンファイバーと3Dプリントアルミ、レニショー製の3Dプリントパーツ
- ハンドルバー:レニショー製の3Dプリントチタン
- ステム:レニショー製の3Dプリントチタン
- ホイール:ホイール全体を単一の金型で製造できる革新的ワンピースディスクホイール