
初期のアルミ自転車、カミナルジョン。なんと、3段変速で重量は8kg台と軽いのです!
21世紀では珍しくもないデュラルミン(Duralumin)は、アルミに銅、マグネシウム、マンガンなどを添加したアルミニウム合金。軽量でありながら鋼材に匹敵する強度を持つことが大きな特徴で、この特性から航空機、自動車、船舶などのハイエンド機械の構造材に使われた。
フランス人は大の軽量化好き。高価なトップクラスの自転車を追求する文化がある。自転車史家のRaymond Henry氏によれば、アルミ製レーシングサイクルは、ルパリー社(Rupalley)が1896年にガス溶接のラグレスで試作品を製作し、カミナルジョンと同様にドラージュ社(Delage)は1933年にラグ付きボルト留めの軽量アルミフレームを少量生産していた。
アメリカでも1890年代にLu-Min-Numが軽量と剛性を売りにするアルミ自転車を作ったし、1930年代にはMonarkとHawthorneがバルーンタイヤ付きアルミ自転車を製造している。
要は、19 世紀後半から、アルミ自転車の先例はあった。
Ken Denny 氏によるこのブランド解説から引用。
フランス南西部のボルドー近郊で生まれたピエール・カミナード氏(Pierre Caminade 1879〜不明)がアルミ自転車の開発に取り組んで成功した。カミナードはWW1直前の1910年頃、パリ市内の郊外ビオ・コロンブにフレームビルダーとして店を開き、バッファロー(パリ)自転車競技場のレーサーたちに軽量レーシングサイクルを提供してすぐに評判を得た。彼の自転車ブランド“カミナルジョン”(1910年〜1950年頃)は1936年に発表され、高度な技術と先進的な機械加工、そして精巧なアールデコ様式の美学が融合していた。
ヘッドチューブは単一の鋳造部品で、ヘッドチューブとヘッドラグが 1つの連続した鋳造品
門脇大作氏がブログに特徴を記したように、最大の注目ポイントは八角形のデュラルミンチューブで、装飾的なカットアウェイのデュラルミン製ラグに特性ボルトで固定された。シートステーとチェーンステーには、アルマシリウムと呼ばれる高弾性合金を使用。ヘッドチューブとラグは一体成形。フォークも同様に製造され、クラウン全体が一体成形され、ブレードがボルト締めされていました。八角形のチューブフレームは、数十年後に登場することになる接着式アルミニウム自転車の先駆けともいえるものです。
カミナルジョンの成功を支えたのはパリに本部を置く貿易協会、ソシエテ・デュ・デュラルミンの宣伝力による。さまざまなモデルが販売されていたが、フレームのデザインと製造工程はすべて同一で、八角形断面の内壁をダブルバテッド加工したデュラルミン製チューブと、コルクを充填したダンパーエンドで構成されていた。チューブの接合には、非常に高精度な鋳造アルミニウム製ラグ(アールヌーボー様式)が使用された。ラグには対向するセットスクリューが取り付けられており、メインチューブを圧入して位置合わせを行なうことができた。
サドルベースは板状アルミで造形。サドル皮革は前方下部で左右を縫われる
ストロングライトのチェンホイールはオリジナルより軽量化されていた
ネジにはカミナードの盾型ロゴがあしらわれていた。円形楕円形断面のフォークブレードとステーには、セットスクリュー留め具付きのプラグインタイプの鋳造フォークエンドが取り付けられる。
これは、現代のリプレイスエンドの半世紀以上前の先駆けです。
フォーク肩を見下ろしペンライトで照らすと、挟まれた木材を確認できた
撮影に同行された自転車文化センター学芸員の森下昌市郎氏がフォーク肩を上から見下ろすと木製(コルク?)部材嵌合を目視。「この木は、硬いデュラルミンパーツ同士を締め付けて固定する際の塑性変形を防ぐために挟んでいるのでしょうね」と教えてくれた。
彼が感心していたのはウイングナットの造形も。「バタフライの縁が微妙に膨らんでいるので指がフィットしますね」との由。
ちなみに2025年現在、CAMINARGENTブランドの自転車がある。これはe-MTB。フランスの造形デザイン、時代を超えてエスプリが効いています!
Fabriqué en 1938, CAMINARGENT
フレーム:Octagonal Duralumin tubes bolted aluminum frames were fastened in ornate cutaway Duralumin lugs. and Stronglight headset.
ハンドル部:Caminade extruded rims, Caminade (Atom)
ブレーキ:LAM super-dural.
サドル部:Mansfield ( Duralumin railed saddle)
ホイール部:hubs, Bismarck ,spokes(木リム用ニップル),rims, Clement 36H
駆動部・変速機:Stronglight 49D crankset, Lyotard pedals.
変速機:SUPER-CHAMPION type Professionnel Brevete.
その他:ERP Fahrrad-Pumpe.
重量:8kg range
撮影協力:葉山自転車市場
参考文献
http://www.blackbirdsf.org/caminade/