かつて、日本自轉車新聞へ『伊豆半島一周記』なる記事が昭和26(1951)年に掲載されました。執筆者は故・鳥山新一氏でNCTC技術委員の肩書。
N.C.T.C.(日本サイクリスツツーリングクラブ)は日本最古のクラブで、その5周年ランに21名のクラブ員が結集、それぞれ自身で工夫したスポーツ車を持ち寄り、部品類も携行品も服装も<他のクラブ員をアッと驚かそうとそれぞれ頭をひねって新しいアイデアのものを作ってくる始末>(原文ママ)と、走ることにプラスアルファの楽しみを鳥山さんは紹介しています。
また、<われわれのクラブはとにかく高踏的と批評されているようですが、だいたい英国のサイクリングクラブの形式で自然に親しむかたわら、研究的態度でサイクリングを楽しんでおります>と断りをいれ、<小生は(中略)車の構成と走行性能、各部品の機能等も研究しながら走ります>と当時、サイクリングクラブ同士で軋轢があったような記述とともに、鳥山節を開陳。21世紀のいま読むと、モダンなサイクリング黎明期の動向がうかがえて興味深い。
ちなみに日本自轉車新聞の掲載写真では、英国式スタイルがわかりにくいので、2022年にイギリスの雑誌(Veteran-Cycling Club NEWS&VIEWS No.406)に掲載されていた写真を転載します。サドルバッグを使うのが特徴です。
以下、鳥山さんが研究していたことを少し紹介。
<手細工で作ったシングル・ワイヤーのディレーラー式3スピードギヤの実地試験を主として行うととし、併せて我が国で初めてベアテクニック(これはブレーキケーブル、チェンジギヤの外のケーブルを省略して重量を軽くし、かつ作動を官能的にした新しい工作技術です)の効果やシングルワイヤーのチェンジのハンドルバーコントロール、Cタイプのブレーキレバーにゴムのパッドを併用してこのフッデッドレバーの効果等も実際のかなりな過酷な条件下で試験>したと記している。ベアシステム=直付け工作という用語、懐かしい。このとき、フレームにはフランボヤン式メラニン塗装を試み、デュラルミンの泥除けには白色の尿素樹脂塗装を施したそう。
72年前、鳥山さんの自転車探求ライフはとても楽しそうですね。