Site Loader

転機があれば子どもは変わる。

孫のHは、小学校に入って身長110cm、普段はあまり外遊びを好まないし、自転車の補助輪を外せるようになっても自主的に乗らず、折につけ「怖い」とよく言う。

そんな孫を連れて、友人の船を訪ねた。運河に係留されている小さなセーリングボートで、3つの船体で構成されるトリマラン。

係留地への砂利道にクルマを入れると、未舗装路が新鮮だったようで、「冒険だね!」と興奮気味。河口の行き止まりでクルマを駐めるとヨットのマストが並んでいる。

さあ、試練が待ち受けている

岸壁から浮桟橋には、体重をのせるとしなる長さ2.5mくらいの板が渡されている。その斜度は10%くらい。岸壁は地面、浮桟橋はそれなりに広い。でもその間の板は不安定に揺れるスロープで踏み外せば水に落ちる。

興奮覚めないままの孫は、ロープで手すりをつくってやり、「下を見ないでまっすぐ歩きなさい」のアドバイスで難なく浮桟橋に降りた。この成功体験が興奮にブーストをかけたようだ。

天気予報は夜には雨になるが、午前中は晴れ。昼が近い時間だが空はまだ青い。風もジェントルで舳先から吹いていた。子ども用ライフジャケットを着用した孫のテンションは上がりっぱなし。船尾で水中の魚を観察し、立ち上がればマストから伸びるワイヤ類を片手にしてバランスを保ちつつ周囲をちょこまか動きまわる。

セールボートの主である友人はいつもひとりで帆走しているシングルハンドに慣れたベテランセーラー。すぐにメインセールとジブセールを桟橋で揚げてから船外機の推進力で後退しながら、もやい(船と桟橋を結ぶロープ)を解いた。静かにボートは動き出す。

海に出ると即座に、セールが飛行機の翼のようなシェイプをつくる。船外機のエンジン停止。右舷から風速6mくらいのちょうどいい風で帆走する船はたちまち海面を滑る。風の息吹と空と雲の織りなす光景、気持ちいい。

キャビンの入り口に座らせた孫は、目をキラキラさせている。30分ほど進んでからUターンして戻る。帆走スピードはGPSで時速10km程度。

光る海に漁船、そこに群れるカモメの群れ。

友人が「カモメは目がいいから餌を投げると飛んでくるよ」と教えたので、孫にスナック菓子の袋を手渡すと、友人にどうぞと勧めたあと菓子を手に、飛来するカモメを辛抱強く待つのだった。

カモメに向けてスナック菓子を放り投げる。

何度か投げてダメで、また飛来するカモメを探す。

セーリングボートに初めて乗ると、船酔いをしたり、船体が傾きながら帆走することに緊張するビギナーがいる。だが、孫は物怖じしないで、ダイナミックなセーリングを楽しめたようだ。

帰宅した孫が、「自転車に補助輪をつけて」と母親をとおして言ってきた。

怖がり屋の彼に何がそう言わしめたのか。

セーリングのダイナミックな愉快さがその一端であれば、とてもうれしい。

Post Author: coppi