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ヴィンテージ自転車のコンクール審査は、欧米のEroica基準が根底にあるが、第10回FERRO Mari e Montiではオーナーが自転車に寄せる気持ち・物語性を重視した。

鋸山美術館に展示された4台のコンテスト受賞車両。美術館では現在、『染川英輔展-房総編-永遠の祈り』を開催中。 photo⚫︎ バックス事務所

photo⚫︎ Masayuki rocky Tsuyuki

山本純さんのアンタレスがBest of Best

アンタレスはサイクルメイト・ヨシダの工房(埼玉・志木)で、山岸健二ビルダーが手がけたフレームだ。設計寸法は往年のルネエルスに準じた1950〜60年代ロードバイクと同様、シートチューブとホイールの間に余裕があるが、エンドには泥除けダボがない。そして、センタープルブレーキが直付けされている。ルイゾン・ボベ選手が乗っていたような寸法のロードフレームである。オーナーの山本さんは5年前に中古で購入。

「少年時代はアンタレスより下グレードのシャウラでした。買ったアンタレスはロゴの綴りがLなので1980年代に流通したフレームだと思います」(ヨシダ系列は現在Y’s Road店舗となり綴りはANT☆RES)と山本さん。

アッセンブルされたパーツ類の選択に微妙な部分もあるが、とても綺麗に磨き上げてコンテスト参加された。また、国産ブランドでもスポーツ車普及に尽力していた量販ブランドのアンタレスが、この手のコンテストに登場する機会は少ない。日本のスポーツ車文化を底辺で支えた貴重な文化を体現する車両という意義からも、これをBest of Bestとした。

photo⚫︎ Masayuki rocky Tsuyuki

柳一郎さんのSEMAS:特別賞

セオサイクルのオリジナルSEMASが出品された。なんと、40年以上も愛用している40段変速の魔改造スポルティーフである。が、あまりにも状態が芳しくなく、手入れも行き届いてない。しかしアンタレスと同様にショップのセミオーダー車を相棒にして過ごしてきたオーナーの姿勢を評価し、審査員である関正邦氏が “40年使い倒したで賞”と決めてくれた。

「普段から乗りっ放しなんで。フロントキャリアの直付けライトも壊れたのでそのまま。それでもよく走ります」と柳さんは笑う。ステージに上げる前に審査員が少しウエスで掃除。

 

photo⚫︎ Masayuki rocky Tsuyuki

カナタケイシさんのcoppi:特別賞

coppiブランドのロードレーサーは、色遣いが素晴らしい。審査員である中島義之氏(NAKASHIMA CYCLE FACTORY)は、「自転車のカラーをきれいにまとめるには色を三色までに抑える。これはシルバー、ブルー、ブラウンで美しい」と評した。アッセンブルされたパーツ類もイタリアンテイストに溢れる。細かい組み付けに難ありだが、全体の佇まいは素晴らしい。

photo⚫︎ Masayuki rocky Tsuyuki

福島秀記さんのデローサ:特別賞

ピンクのデローサのはもちろん美しいが、これを特別賞に推したのは手づくりの用品類に寄せたオーナーの心持ち。カスク、バッグ類は柔らかい皮革を手縫い。さらに驚きはバーエンドが寄木細工。「バッグをオーダーしようと思い見積もりをとったら高いので、自分自身で手縫いし、輪行するときのサイズに合わせて裁断したり。やりだしたらカスクまで作っていた」と福島さん。本来は鋭利な競争機材のイタリアン・ロードレーサーが、オーナーの使い方に合わせて懇切丁寧な手作業であたたかみを滲ませている。

photo⚫︎ Masayuki rocky Tsuyuki

今回はアンタレス(サイクルメイト・ヨシダ系列)、セマス(セオサイクル系列)という“プロショップ・ブランド”が参加して共に受賞。これはTOEIやzephyrやNAGASAWAなど珠玉のハイ・ブランドとは違う階層で、廉価でありながら良品を目指したブランドである。

アンタレスの山岸ビルダーは合理的作業で、納期=早く、価格=安くのポリシーで作られたが、高価なオーダー車に見劣りしない工作や仕上げを実現。セマスは、さまざまな工房や下請け専門フレーム工場にフレーム作りを外注した。

アンタレスやセマス、関西ではワンダーフォーゲル(城東輪業系列)などのブランドは、消費者が地方都市の代理店でも質の高いスポーツ車を購入できる道筋をつくり、1970年代から20世紀末まで続いた時期の日本全国的サイクリング文化を盛り立てた。

Post Author: coppi