コンゴでは物流を担っている少年たちがいる。
1960年に旧宗主国ベルギーから独立したコンゴ共和国は、70年代はまだ政治・経済が混乱して内戦で難民も多く、公共サービスもまともでなかった。そんな状況で誕生したのが“チュクドゥー”だ。 廃材、壊れたオートバイの部品が材料。山刀やノミを駆使して手作りできるローテクな木製スクーターバイクだ。(ペダルがあれば自転車なのに!)
チュクドゥーがあれば少年たちも、食料や薪などの必需品を運搬できる。スケートボードを操るように路面をキックして走り出す。ステアリング操作ができて、ブレーキも後輪にある。上り坂は押して進む。 食料、薪、農作物、レンガまで何でも運搬。用途によって搭載を工夫し、大型チュクドゥーなら最大800kgを搭載できるという。
前後輪を結ぶメインビーム(デッキ)は1本の木材で、オーストラリア原産のユーカリや、赤道アフリカ原産ムンバという熱帯樹木が用いられる。ムンバはユーカリより硬くて蒸し曲げ加工も可能。デッキは地面に10度程度の傾斜角を持たせる。デッキ上には膝をのせるゴム(ニーシート)が釘で打ち付けられる。
地面に後斜60度程度の丸太状フォークコラムは、4本のサポートプレート(支柱)とビーム(梁)に支えられ、デッキ前方のくり抜かれた部分を貫通。フォークコラム下部は枝分かれ(フォーククラウン)形状に加工されて左右フォークブレイズへと続く。そこに前輪が収まる。
フォークコラムは、ゴムやスプリングで逆吊りされている。これは路面からの衝撃をいなしフォークコラムのしなりを許容する働きもするようだ。操縦安定性に貢献。コラムとサポートプレートなどの隙間は、繊維に油を染み込ませて潤滑させている。
デッキ後尾は切り込みが施され、そこに後輪が収まる。後輪の前部にはゴム片を打ちつけた木片があり、足で踏むとゴムが後輪に接触してブレーキとして機能する。 木製前後輪には廃タイヤが貼ってあり、車軸はオートバイ部品を流用のようだ。YouTubeで見るとローラーベアリングらしきものが認められた。前後輪の固定は、ビームの切り込み溝に収まる。溝の地面側にゴム片を釘で打ちつけて車輪が脱落しないようにしている。
2008年、チュクドゥは1台100ドル(現在は150ドル以上)で販売され、材料費は約60ドルだった。3日〜1週間で自作できる。これを所有すれば、ほとんどの人たちが1日2ドル以下で生活する地域で、運搬仕事で1日最大10ドルの収入(難民キャンプに国際連合の援助物資を運ぶ2014年のレート)を得られた。自作すれば6カ月で減価償却できたわけ。ただし耐用年数は2〜3年。
チュクドゥーはコンゴ民主共和国の生んだエコな乗り物。主生産地であるゴマ(北キウ州の州都)の誇りだ。 2009 年、ジョゼフ・カビラ大統領はゴマの中心部にチュクドゥの記念碑を建てた。
掲載画像はwikipediaなどwebより流用。
https://www.designindaba.com/articles/creative-work/congolese-wooden-bicycle-cum-scooter-carries-hundreds-kilograms