ヴィンテージ自転車趣味の世界標準はイタリア発祥のEroica。でもアメリカにも素晴らしい伝統がある。
ご存知のようにEroica は1987年までに製造されたロードレーサーで愛車自慢をしてコンクールする。
基本分類はこれ。
1) Bici da Corsa Senza Cambio sia a rapporto fisso che con giroruota costruite fino agli anni ‘30
1880年〜1930年代までのヴィンテージ自転車。
2) Bici da Corsa con Cambio 1931-1950: dal Vittoria Margherita all’apparizione del Gran Sport
1931年〜1950年代。変速機がカンビオや、ヴィットリアマルゲリータなど古いのを付けた自転車を含む。
3) Bici con Cambio 1950-1987: dal Campagnolo Gran Sport in poi
1950年〜1987年。タンデム、トランスポーターなどを含む。
ただし、アメリカはヴィンテージ年代がちょっと違う。Global Eroicaで採点基準策定責任者のウェスリー・ハタケヤマ氏に2017年に聞いたところ、「ヴィンテージをイタリア本国では1930年としているがアメリカは1949年です。その理由はアメリカ東海岸で6日間レースが盛んだった歴史があるから」と教えてくれた。
ウエブ検索すると、昔の6日間レース関連書籍がすぐ出てきました。
coppiが注目するのはアフリカ系アメリカ人の “メジャー”テイラー選手(Marshall Walter “Major” Taylor)。世界チャンピオンレベルを達成した最初のアフリカ系アメリカ人です。
テイラーは1878年インディアナポリスで生まれ、1932年6月21日にシカゴで没。故郷の自転車店で働きながら10代からトラックとロードレースを走り、18歳でプロに転向。東海岸の都市に住み6日間のレースを含む複数のトラックイベントに参加。1897年にスプリントイベントに焦点を移し、全国のレースサーキットで優勝して大衆に人気を博した。 1898年から1899年の間に、彼は1/4マイルから2マイルまでのレース距離で数多くの世界記録を樹立。
YouTubeに彼が全盛期6日間レースで活躍した短い映画がある。The Six Day Race:The Story of Marshall Major Taylor
https://www.youtube.com/watch?v=HdBUSkYmeP8
サイクルスポーツはヨーロッパ生まれの遊びという常識があるけれど、どっこいアメリカの歴史も面白い。
エロイカ好きのマニアには、プジョーやアリシオンといったフランスの自転車は認知度が高いですが、テイラーが乗るレーサーもロングホイールでヘッドとシート角度が寝ている。ハンドル形状は深いドロップが主流を占める。
写真をよく見るとハンドルステムの突き出し部分にスライド式クランプが上向きにある。これ、日本でも似たような製品がありました。
アメリカは多国籍人種なので、コンクールではどんな自転車も平等に扱いパーツの細部まで厳格にチェツクする。自国製品を贔屓することがないそうです。
テイラーは1896年、マディソンスクエアガーデンで開催された“6日間レース”(不眠不休で走り続ける)に28人の競技者の1人として参加した。観客は疲労と睡眠不足をおそらくは薬物に頼りながらもゾンビのように走る選手を見るためにゲートで入場料を支払う。入場料の売り上げは賞金に反映されるイベントレースで最終日は6,000人を集客。
12月6日から最終日の12日まで走ったテイラーは意識朦朧となり、142時間で合計1,732マイル(2,787 km)を完走し、8位でフィニッシュ。勝者であるテディ・ヘイル選手(TeddyHale)は、1,910マイル(3,070 km)を完了し、賞金5,000ドルを持ち帰ったそうです。
テイラーへの尊敬はアメリカにおいて現在でもあり、トラックバイクのシグネイチャーモデルや、ファッションアイテムに存在。語り継ぐ自転車文化、大事にしたいですね。