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富津岬が好きだ。

だからこそ、その魅力を見直そう。

昭和天皇がお手植えされた黒松は枯れたが、

緑と潮風に彩られた富津公園のポテンシャルは揺るぎない。

松林による景観といえば、“日本三大松原”が有名。

最メジャーは静岡の「美保の松原」で、松原越しに霊峰・富士山が望め、天女と漁師の出会いを描いた羽衣伝説のふたつが魅力。大正11年(1922)に日本初の名勝に指定された。

しかし富津岬には勝るとも劣らない魅力がある。

富津岬からの大貫海岸に至る南東へ4kmほどの海岸線も、砂浜・砂丘と遊歩道で繋ぐ防風林である。

最端は古事記・日本書紀に登場する日本武尊(やまとたけるのみこと)の東征にまつわる神話の地で、「弟橘媛(おとたちばばのひめ)碑」がある。碑の建つ千種の浜は近年まで「岩瀬郷」と呼ばれ、近くは石根崎、富津岬の景勝地に囲まれ、西の海に走水(はしりみず)、観音崎の背後に富岳函嶺を望む、白砂青松の海浜である。

海辺の遊歩道を早朝から午前中、高齢のご夫婦がのんびり歩く。

上空にはトンビが気流に乗ってスローに浮かぶ。

砂浜には犬と飼い主の足跡。千鳥の小さな足跡もかわいい。

貝拾いの子ども。打ち上げられた流木鑑賞が好きだ。

乾燥した冬場は、砂を掘って流木を燃やす古老がいる。

松林のなかには、野生の猫、タヌキが生息。

人を恐れずに道端で日向ぼっこ。

哀れにもタヌキ、ヘビの類は明け方にサイクリングすると

クルマに轢かれてペシャンコ。枯れ枝で道端に寄せてやる。

まあ、とにもかくにも松林の生態系は豊かだ。

岬の先端あたり、魅力的なのは海での遊びやすさ。

水上オートバイ(パーソナルウォータークラフト)でのエントリーが公認されているポイントがある。また、岬の南東側に伸びる砂浜では年間を通じてカイトサーフィンなどを楽しめる。もちろん、海釣りを楽しむ人も多い。

夜景もいい。富津岬の目の前は東京湾入り口である浦賀水道で、夕暮れどきには航海灯を灯した大型船が通る。背景は三浦半島の灯り、観音崎の灯台の灯が点滅、北西に目をやれば遠く横浜やベイブリッジが瞬く。都会的でロマンチック。

最初に掲載したのは明治百年展望塔で、打ち上げ花火を待つ人々が南側を眺めている。

この方向に、前述した弟橘媛碑に至る松林が海岸沿いに続いている。

–うつくしもりを たもちてわさわひの たみにおよふを さけよとそ思ふ–

防砂林と散歩道。イタズラに賑わいがないだけ、自然豊かで自由に遊べる。

お手植えの松に込められた昭和天皇の想いは、生きている。

 

主要参考資料  

『千葉県富津公園』 編:千葉県都市部計画課 刊:昭和53年

『富津市史 史料集二』 編:富津史編さん委員会 刊:昭和55年8月

『富津市史 通史』 編:富津史編さん委員会 刊:昭和57年3月

『広報ふっつ』編:富津市役所秘書課 平成元年2月刊

『海岸砂防林のあゆみ』 編:社団法人千葉県治山治水協会 刊:昭和52年1月

『ふるさとの思い出294 写真集 明治・大正・昭和 富津』編:国書刊行会 刊:昭和59年

Post Author: coppi