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『十九世紀イギリス自転車事情』という本を読み返しました。

この本はオーディナリー型が隆盛した1880年代の英国で、自転車趣味やスポーツがどう発展したかを詳しく記しています。読むと英国が他の欧州自転車レースが盛んであった他国との差が浮き彫りです。

その差はこうです。19世紀後半のイギリスは近代的スポーツが形成された場所だし、自転車を進化させた国ではあったけれど、自転車登場当初からロードレースに対して社会が不寛容だった。1890年代から1940年に至るまでロードレースを開催するのが難しかったのでフランス、ベルギー、オランダ、イタリアなどのヨーロッパ大陸諸国と比較するとロードレースが盛んであるとは言えない状況だったそう。

英国では1835年の公道法によって、フットボールやその他のゲームが道路や広場から締め出され、赤旗法が1865年にできて蒸気自動車が事実上道路から締め出された。そんな社会では自転車の走行まで迫害対象になりましたがCTC(自転車ツーリングクラブ)などによるサイクリストのモラル向上や自転車自体の量的増加で免れることができた。

公道で自転車ロードレースができないために英国ではトラックでの周回レースが盛んになった。これは自動車やモーターサイクルでも同様だった。で、オーディナリー型のレースでは車輪の大きさでタイムを競うわけです。大きな車輪の方がスピードが出るので有利ですが、大きな車輪の上で乗車姿勢を取るために高いサドルに助走をつけて飛び上るのはリスクがあり、その反面でスリルに満ちていたわけです。体力のある男の遊びでした。

上の写真は1970年ごろのオーディナリーを撮影したときのもの。サドルは地上2mほどだから座って見るとそこらのブロック塀より高い。怖いです。この時代から自転車は、鋳鉄から合金になり、中空のチューブになる。スポークホイールで剛性が高まる。前輪駆動のオーディナリーから、チェーンを用いた後輪駆動も登場。駆動方式も多様になり、ゴムのタイヤができて空気入りチューブが誕生。三輪自転車も台頭。すごい技術革新。

この年末、歴史的自転車の本を制作して忙しい日々です。でもね、自転車の発達ってオーディナリー型から安全型に移行する時代がいちばん面白い気がします。

 

 

Post Author: coppi