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SNS(Social Networking Service)がないアナログ写真時代には、写真趣味はハイクラスな文化だった。一眼レフカメラで露出と絞りを被写体に応じて自分で選び、構図を決めてシャッターを押す。今ではスマートフォンのカメラ機能できれいな写真も動画さえお気軽に撮影できる。

原明吉さんが写真にのめり込んだ1965年頃は、写真世界にはジャンルがあった。風景写真、人物写真、天体写真など、同じ趣向の人が共鳴しやすいジャンル=小社会というわけ。70年代はカメラのAE化が進み煩わしい露出やシャッター速度から解放されて、スマホほどではないが気軽に撮影できるようになった。カメラはオーダー自転車と同様に所有欲の対象にも。サイクリング写真集団を呼びかけた原さんの手元に各地の同好の士から作品が集まった。

記憶に残る写真の条件は? そう原さんに質問したら、「やっぱり雑誌に採用された作品です」と即答。上写真はニューサイクリング誌1977年2月号の表紙。撮影地は三国峠。「八ヶ岳の高原から走り出したら大雨、旅館で雨宿りしたら寝坊しちゃってね。秩父に下る途中の夕方に撮影した」と記憶は鮮明に蘇る。

一枚の写真から蘇る個人の思い出。それが“作品”ならば多くの自転車好きを感動させるはずだ。

 

Post Author: coppi