カヌーの本を探していたら、「いま生きているという冒険」(石川直樹著・新曜社刊)が児童書の棚にあった。
陸・海・空あらゆる場所を徒歩、自転車、カヌー、気球などで旅した紀行文。まるでパレットにいろんな色の絵の具をしぼりだしたような本だ。どの章も鮮やかな写真が添えられ、漢字にはルビがふられて親切な説明・図解を含めて冒険的な旅が綴られている。
先日、釣りに使える2人乗りカヌーを購入したのでカヌー入門本を探していて図書館で検索したらこの本に出会った。目次をチェックすると、1章:インド一人旅、2章:アラスカの山と川、3章:北極から南極へ、4章:七大陸最高峰とチョモランマ、5章:ミクロネシアに伝わる星の航海術、6章:熱気球太平洋横断、7章:二度目のチョモランマ、8章:想像力の旅。
奥付が318ページの分厚い単行本だが、興味ある章から読めるし、紀行文としても、人間的な出会いと交流も細やかに描かれ、2日で読了。
5章のカヌーは、海図も羅針盤もないなかで南太平洋の住人が、星を頼りに海を航海していたノウハウを著者が現地で寝食を共にして師匠から学ぶ。そして師匠とミクロネシアの大海をカヌーで航海。ヨット好きな僕には興味津々。
6章の熱気球は、とびきり危険な旅。高い山に登るとお湯の沸点が低くなってコメを炊くのに困るという知識はあったが、この本を読んで<ヒマラヤなどの高所では五十度から六十度くらいで沸騰してしまいます。高度一万九千メートルでは人間の体温である三十七度が沸点なので、血液が沸騰して一瞬にしてミイラになってしまうわけです>との記述におお、そ〜なんだぁ!!
自転車雑誌編集者時代に冒険家の安東浩正さんを担当したことがあり、一昨年にお会いしたときに熱気球のベース基地を栃木・渡良瀬遊水池に設けたいと聞いていましたが、石川さんも渡良瀬で気球操縦修行をしたとの由。じつは安東さんの影響で僕は南房総に掘っ建て小屋付き土地を買って波乗り&カヌーで老後遊びを始めたのです。波間に漂う浮遊感が好きだ。
第8章、冒険は想像力の旅。石川さんも安東さんにも同じような精神的共通項がある。石川さんは<現実に何を体験するか、どこへ行くかということはさして重要なことではないのです。心を揺さぶる何かに向かい合っているか、ということがもっとも大切なことだとぼくは思います>と表明。
人生は旅。自分もまたいつも冒険者でいたいと思う。