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2020東京オリンピックの女子ロードレースで、2つの驚きがあった。リアルスタート0km地点から逃げて独走勝ちしたアンナ・キーセンホーファー(オーストリア)の勇気・偉業は実に語り継ぐべきドラマだ。

東京と神奈川の境にある相原交差点でマーシャル執務をしながら、キーセンホーファーを頭に5人の逃げグループを目撃して2分以上してオレンジ色の強豪オランダ勢4人を含むプロトンが目前を通った。まだまだ序盤。

道志みち(脚にじんわりくる山伏峠)や籠坂峠を経てフィニッシュの富士スピードウェイまでは距離137km・獲得標高2,692mのロングレース。実況放送を見ながら感心したのはキーセンホーファーの前乗りライディングスタイルがこんな長丁場で通用する事実だった! 

まるでトライアスロンや追い抜き競走のようなフォーム。彼女の勝利によりこのフォームは正義となった。英国贔屓の友人から電話が来て、「あれは1960年代のベリル・バートンを彷彿とさせるね」と言う。確かに。

Beryl Burton(イギリス)は1960年代に世界選手権でロードは3つのメダル、トラックで12のメダルを獲得した生涯アマチュア女子選手。前乗りポジションで無数のマイル記録を樹立! YouTubeの「Racing is Life-The Beryl Burton Story」をご参照ください

ライディングフォーム以外にも興味深かったのは、選手がチームカー監督からの指示なしで個人判断によりレースを走っていたことだ。キーセンホーファーは数学の博士号を持つ頭脳の持ち主。きっと勝算あったのだろう‥‥か。

フィニッシュまで61km、道志みちの勾配が増したところでオランダ勢が最初のアタックを仕掛けたのは予めたてた戦略どおりだろう。個人の判断ではなくチームオーダー。デミ・フォレリング(オランダ)が仕掛け、彼女が吸収されるとチームメイトのファンフルーテンが、ファンフルーテンが吸収されるとマリアンヌ・フォスが、そしてフォスが吸収されるとアンナ・ファンデルブレッヘンが立て続けにアタック。頂上まで1kmほど残した付近でようやくファンフルーテンが単独で抜け出すことに成功した。

その後の展開は、先頭のキーセンホーファーとファンフルーテンのタイムギャップが縮まらない。自ら考えて走る個と、ナショナルチームの戦略というマインドの違い、縮まらない縮まらない追走劇をドキドキしながら楽しめた。

単独逃げの勇気、個人プレーvsチームプレー。

2020東京オリンピック女子ロードレース、1950〜60年代のツール・ド・フランスに覚えたような物語性に心から酔えた。

Post Author: coppi