昔の女子競輪で使われていたサミエル号。ヘッド部の吠える犬は目が宝石。シートチューブには駆ける猪。犬も猪も金属加工で彫金した象眼細工です。
干支に登場する動物が題材にされた
ヘッドとシートのチューブ表面は前者が網状であるのに対して、後者はツルツルの滑らかさ。網状の加工は布目象眼技法か。フレームチューブと細工物は銀ロウできれいに溶接されている。
チューブの要所には大きなガセッドが装飾的にあり、「SAMIEL」または「KINRINSHA」と文字が欧文筆記体で入っている。フォーク肩から下へのガセッドにはサミエルの「S」はアールヌーヴォ風。
写真のレーサーは、1949年(昭和24年)〜1964年(昭和39年)まで行われていた女子競輪選手が愛用していたもの。サミエル号は1970年と75年に賞金王に輝いた福島正幸(群馬)選手も愛用し、彼のヘッド部には赤いルビーが嵌め込まれていたそうだ。サミュエル号は大正2年に創業した錦輪舎製作所の望月良男(東京市本所区)が作っていた。強い選手でないと供給してもらえなかったと聞いています。
ちなみに今、サミエル号は東京で見ることができる。
八王子夢美術館で『自転車のある情景』―ART SCENE with BICYCLE―が11月23日まで開催中で、絵画やポスターや写真だけでなく1870年代のミショー型から、近代、現代のモダンな実車までズラリ。八王子はまた1964年の東京オリンピック開催地であったためにその関連展示が充実。ぜひお運びください。
この情報はサミエル号を取材させていただいた大阪・堺の自転車博物館サイクルセンターよりいただいた。
フレームを装飾する文化、奥深いですね。