タイトル写真は2003年10月29日「中日新聞」の陸舟奔車関連記事
“ビワイチ”(琵琶湖一周)をやったことありますか?
サイクリストは島や湖一周、岬の先端、峠とか、達成感を求めてやり遂げたがるもの。でも、たまには自転車の歴史探訪をテーマにしてみませんか?
琵琶湖・湖東エリアの彦根に、日本が世界に誇れる自転車文化遺産がある。それは陸奔舟車(りくほんしゅうしゃ)。1732年(享保17)年に彦根藩士・平石久平次が発明した小舟の形をした自転車。先日、その拠点を訪れました。
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長松院の山門を潜ると、元は弁天堂だった小さな建物が左にある。「平石久平次資料館」、「可休庵」の看板があり、お堂のなかには平石久平次ゆかりの品と資料が納められている。
本堂前には平石久平次時光之墓と石碑が、二百五十回忌で移設されてある。
DATA:萬年山 長松院 (創建1602年/曹洞宗) 滋賀県彦根市中央町4-29
手塚紀洋方丈にうかがった。
2020年にこれを作りました。作る前の私は平石久平次翁を知りませんでした。平石家の墓は無縁墓として供養し、弁天堂も老朽化していたので取り壊す予定でした。しかし、地元の歴史を研究している杉原正樹さんという方が私に、「この墓はとても重要な人物のもの」と教えてくださり、彦根藩士であった平石久平次翁が天文・科学に優れていて新製陸舟奔車を作った記録があることを知りました。
その史実がわかったので、改めて平石家について、過去帳を調べてみたところ、戒名から平石久平次翁の墓であることが判明。また、奇しくも平石九平次翁の二百五十回忌に当たる年であることが明らかになりました。それを田中家石材の田中社長にお話したら、本堂の前に平石家の墓を移設し、平石久平次翁の偉業を刻んだ石碑を建立することをお手伝いいただけることになりました。
可休庵に収められている陸奔舟車は復元車。実際に走る。(テレビ朝日制作寄贈・彦根図書館所蔵)
弁天堂も普請し直して、九平次翁の戒名『可休軒義翁宗高居士』から「可休庵」(意味:ゆっくりお休みなさい)と命名しました。
今後は彦根に来るサイクリストたちに、自転車の祖である平石久平次翁の偉業を知ってもらい、墓参りと安全祈願を込めて手を合わせていってもらえる場所にしていきたいと考えています。
この鉄塔は大正3年に子孫が祖先の業績を伝えるために建立し、陸奔舟車関連の記録文書を収めた。鉄塔は第二次世界大戦で供出され、その土台のみ現存。
鉄塔写真は「文学博士石野瑛編 足利彦根横濱に於ける平石家」口絵より引用
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「可休庵」にはサイクルスタンドも設置されている。
江戸時代の先人による自転車の智慧にぜひぜひ向き合ってください。