房総半島の内側が行動エリアだと、東京湾観音はよい目印だ。高さ56mの構造物が海に突き出した山頂にそびえている。
朝、富津岬のビーチでサーフボードからその後ろ姿を拝む。南房総方面から海沿いで帰るときはその全身アングルが次第に近づく。いつもホッとする。
お盆休みに孫と立ち寄った「鋸山美術館」で、—房総から聞こえる鑿音(のみおと) 木彫家 長谷川昴の記憶—を観た。
2012年に102歳で逝去するまで房総に生まれた長谷川は、明治・大正・昭和・平成まで“鉈彫”(なたぼり)と呼ばれる独自の木彫表現を確立、創作に打ち込んだと美術館ごあいさつで読んだ。現代の円空とも称されたらしい。
石膏でつくった彫像を鉈彫に置き換えるときに、「星取り方」という技法をもちいたそうだ。
<東京湾観音の原型は、高村光雲に師事した彫刻家の長谷川昴が製作した>と、君島綾子著・青弓社刊「平和モニュメントの近・現代 観音像とは何か」を読んで改めて理解できた。なんとなく、子ども時代から何度も東京湾観音には上って解説を読んでいたことを歴史認識できた。
大観音像の先駆けは、群馬の高崎白衣大観音(1936年完成/高さ41.8m)で鉄筋コンクリート造り。戦後の東京湾観音(1961年完成/高さ56m)は日本一の高さを誇り、なにより海と山のパノラマが群をぬいてすばらしい。
観音像内部は螺旋階段で20階まであり、各階には長谷川昴の仏像が祀られ、13階には「腕展望」と19階には「宝冠部展望」がある。信仰3割、観光7割のコンセプトどおりにたまに訪れたくなる。朝夕の眺望がオススメ。
東京湾観音もだが、—木彫家 長谷川昴の記憶—展示は11月12日まで延長されているのでぜひあなたも、直に長谷川昴の温もりに触れ、記憶に刻んでほしい。(一般入場800円)