Site Loader

ケルビム。今や洗練されたスチール好きに訴求力があるブランドですが、創業者の故・今野仁さんは実直に金属溶接を極めた職人であり、海外の自転車事情に敏感で、フレーム設計にコンピューターをいち早く取り入れました。

今野さんは男三人兄弟ですが、みなさん大の自転車好き。次男の義さんは漢気があり破天荒なほど元気がありましたが、長男の仁さんは表面的には大人しくていつも笑顔。

その仁さんがもう40年ほど昔、「面白い自転車を作ったからおいでよ」と電話をくれたので行くとそれは仰向けの寝そべった姿勢でペダルを漕ぐ二輪自転車。「ホリゾンタル・バイクだよ」と教えてくれた。アメリカのヒューマン・パワード・スピードチャレンジに影響を受けて作られたそう。ハンモック式サドルに背中を押し付けるようにして脚を回せば最初のひと踏みこそヒヤリだがすぐに安定し、ハイプレッシャーの小径ホイールゆえに素晴らしい加速感が味わえました。

ケルビムはオーダーメイドだけでなく、リーズナブルな値段でロード、トラック、ランドナーなどの吊るしフレームも販売。でも、タンデムや、サイクルサッカー用など手間のかかる物作りにも情熱を注いでいました。仁さんは熱心なキリスト教徒。ケルビムは“智天使”であり“神の乗り物”という意図で命名したブランド。

上の水彩画はツール・ド・フランスを自転車で追っかけながら描くイラストレターの小河原政男さんと、雑誌編集者時代に春のツーリングをテーマに取材したとき、この絵を描いていただきました。自転車はケルビムで、故今野仁さんが作った吊るしフレーム。ヘッドバッジは大文字「C」でメッキ仕上げ。半世紀ほど前、東京から町田まで中学生の僕は自走で今野製作所に遊びに行き、飾られていた井上三次選手のケルビム製トラックレーサーを眺めてため息をついたものです。このヘッドマークが憧れでした。

Post Author: coppi