“東京サイクルデザイン専門学校”(TCD)は水野学園という専門学校の一部門で、メインはジュエリーなのだという。若きビルダー予備軍の作品を見にいくついでに覗いた宝飾がまた素晴らしかった♡が、3月8日(金)〜10日(日)で開催された「卒祭」で学生たちが精魂込めて作り上げた自転車には若い感性があふれていた。
スペースの都合で勝手ながらcoppiの心にとくに響いた11台を厳選。学生たちは自転車を実習で何本も作れるわけではなく、自転車に関する業界に就職するための知識や技術を2年間で学ぶのがスタンダードコースで、さらに3年制のクリエーションコースや4年制のアドバンスコースで、自身の創造力を発揮するために深く学ぶ場合もある。さて、今季の作品を見ていこう。
やはり、若い感性がまぶしい作品から。
SDG’sな歩行器
先鋒はこれ、使い古されて破棄処分のスケートボードを再利用。「アルバイト先でたくさん捨てるのがもったいなくて」と制作者はコメント。子ども用歩行器として使い役目を終えたらサイドテーブルに。素材のツヤが美しい。
作品名:Saturn
制作者:齋藤航平
分割すれば小径車に!
この発想は画期的だ! 分割式のタンデム自転車で、真ん中のフレームを抜けば、小径車になる。
作品名:DIVISION3
制作者:横山航太
「正しくない自転車」
合理的で機能的。モダンでシンプル。そういった従来の価値観に縛られたくない、抜け出したい、そういう気持ちで自由な発想をカタチにした「正しくない自転車」がこれだ。
作品名:MAIMAI
制作者:道姓龍哉
サドルを省き盗難防止
盗難でいちばん多い理由は、歩きより楽な移動手段として盗まれそのまま乗り捨てられること。ならばと、“歩きより楽”という要素をあえて捨てて、立ち漕ぎ自転車に。(笑)
作品名:Cop
制作者:金子樹斗
前三角はクロモリ
後ろ三角がカーボン素材、前三角は自由設計がしやすいクロモリ素材によるカスタムMTB。まるでチョッパーのような外観が自由なイメージだ。
作品名:Springfield
制作者:朴 民洙(MINSU PARK)
走れるフィッティングバイク
身長160〜185cmの人が乗れるように、トップチューブが伸縮し、ステムの高さと角度が可変し、サドルが大幅に上下できる。BBから垂直に伸びる縦チューブが剛性を支えるそう。なるほどね。
作品名:metamorphose
制作者:若杉健太
さすがと感心させられるのは、実社会との繋がりをみせる作品だ。広い視野で卒業制作に取り組んだこの2台は価値がある。
訪問介護者向け自転車
介護従事者へのインタビューで、「訪問介護中に自転車を移動されてしまった」「車体が重いのでつらい」の悩みを聞いたことから、訪問中の札を装備し、軽く走りやすさを目指した社会性の高い作品。
作品名:Hydrangea
制作者:中嶋健斗
メッセンジャーへの提案
都市部を駆け抜けるメッセンジャーの文化に刺激と憧れを抱く学生が作った。視認性が高く、より安全なカーゴバイクが狙い。「メッセンジャーや業界の方々に届くことを願います」と、訴求対象が明確。
作品名:HIGH VISIBILITY CARGO BIKE
制作者:上田慶太
ここからは東京サイクルデザイン専門学校の視点で選ばれた受賞作。優等生たちの感性と実力をご覧あれ!
グランプリ受賞作
「前輪駆動のほうが効率よく走るのではないか?」、という発想でロードバイクを作ったそうだ。ハンドルを傾けると後輪も傾くスイング操舵。全体的なフォルムは精悍だ!
作品名:STER FIGTER
制作者:伊藤匠真
2位受賞作
折りたたみ自転車はコンパクトになり場所とらずだが、折りたたむのが面倒くさい。その解決策が8インチの小さな前輪によるこのカタチ。ちょっとした移動ならいいでしょ。
作品名:RONDE BIKE
制作者:泉田雄太
プロダクションモデルカテゴリー受賞作
カーボンハイブリッド自転車のレストアがコンセプトで、80年代や90年代に作られて今や廃盤の素材と、その時代のパーツに拘った時代考証を大事に復刻。これぞ姜さんの夢のロードバイク。coppiも胸キュンです。
作品名:Bach’n Time
制作者:姜 京柱(KYUNGJU KANG)
昨年もTCD卒業制作展覧会を観たが、発想面で感心させられる作品に今年は多く出会えてうれしかった。また、土曜には校庭で、インターネットで大阪校と繋いだメタバース空間でのレースを実施。
VRサービスと自転車を結びつけると、リアルな移動手段の先にある近未来の遊び道具、健康に寄与する器具として自転車がある。そういった教育の一環なのだろうか。その反面、短時間でホイール手組みの速さを競うコンテストも実施。
TCDの卒祭、あなたも来年はぜひ足をお運びください!!