36歳の道産子による木製フレームが、『ハンドメイドバイシクル2024』に出展されていた。ブランドは“ピークスファベル”で、本業は木工職人。木肌が美しく、SDGsな志がステキな自転車、ご紹介します。
「農業学校をでたけれど結局は家業を継ぎました。木で額縁や掛け時計の外側を象嵌(ぞうがん)細工したりで作ります」と語るのは河石大輔さん。「他の仕事をしてきて北海道に戻ったのが10年ほど前で、2泊3日や3泊4日の4回に分けて北海道一周サイクリングをジャイアントのグレートジャーニーでしました。4サイドバッグでキャンプ旅は楽しかった」と、遠い目になる。
自転車好きな河石さん、木製フレーム制作に先立ってクロモリフレームを東京のセルフビルドを応援する『BYOB Factory Tokyo』で1本習作し、木製ホイールづくりを『アマンダスポーツ』で学んだ。
手前は2号機でシュリザクラのフレーム、奥は1号機でマツとセンによる習作(完成車重量10.5kg)
河石さんの工房ペッカーでは世界中の木材をつかう(画像:「工房ペッカー」ホームページより)
このフレームは2本目の習作。昔懐かしのトレックYフォイルを彷彿とさせる造形で、木目を素直に表現。1本目は松の木をつかったがこの2本目は桜。
「木工でつかう木は多種多様。希少素材はワシントン条約で保護されて将来はつかえなくなるモノもある。未来を想うと虚しいです。だから、地場の木で自転車を作ろうと思い立ち、2本目はシュリサクラ(北海道産の朱利桜は木肌が緻密でやや柔らかい。建材として流通)にしました。ほかにも北海道の木材はナラ、クルミ、タモ、セン(栓)でもフレームをつくれるはずです」という。
絶えゆく希少植物。固有の種。需要に応じてそれを消費する自分の気持ちに生じた虚しさに、河石さんは立ち向かった。たくさんある地場の木材へ目を向けたのだ。
太い木材を切断加工して部位によって2mm程度まで削る。型制作には職人技がそそがれる
「2本目を作るのには6カ月かけた。最初の1本も制作期間6カ月で70万円くらいはかかりましたが、慣れたら型があるしで量産も可能で、安くできそう。作り方を簡単に説明すると、型をつくり、素材を重ねて接着剤を流し、上下からプレスして100℃以上のスチームで蒸す積層曲げ工法です」と教えてくれた。
接着剤はピーアイボンド、ケルヒャーの温水洗浄機を利用してスチーム加工する
「将来的に日本全国の木で、その地方ならではのフレームをつくりたい。青森県ならリンゴの木。果樹はある年数が経つと伐採して捨てる、その廃材でフレームにしたい」と河石さんは目を輝かせる。
素朴な木目がきれいなピークスファベル。その意気やよし。
河石大輔さんは北海道・旭川で「工房ペッカー」を営む