突然のメッセージ到来。
ついこの前までe-BIKEの伝道師だった難波賢二氏から、「都内信号なし100kmコースを走りましょう」とのお誘いがあった。
え? 都内でそんなこと、ありえないでしょ!! 半信半疑で待ち合わせの豊洲(江東区)に地下鉄・有楽町線で向かう。自転車は用意してくれるというので、てっきりe-BIKEと思いきや、マウンテンバイクだった。

豊洲の波止場(旧石川島播磨造船ドック)は、水上バスで都心へ通勤もできるウォーターフロント。そして、お台場や、レインボーブリッジなどの人気観光施設への足場のひとつ。
それにしても、太いタイヤのマウンテンバイク、その意図は?
「2020東京オリンピック・パラリンピック大会(以下、2020オリ・パラ)ではウォーターフロントにいくつもの競技施設が作られて、施設と施設を結ぶ遊歩道が最後に整備された訳です。ところがコロナ禍で2020オリ・パラ延期となって、遊歩道整備予算が引き上げられて部分的に途切れていたんです。それが、この3年ほどで少しずつ繋がってきた」と難波氏。

マナーとして、遊歩道で対向する人などを見つけたら、一列になりスピードを落とすべき! ブラインドコーナーでも同様な心遣いが必要!
彼はここ数年、健康維持のためにペダルを漕いで走るサイクリングスタイルに趣旨替え。AIアプリのコーチングを活用し食生活、運動を管理・実践しているという。なるほど、かつての体型よりダイエット効果は見てとれる。
知己を得た30年ほど昔、そこは信州のスキー場で、彼はスリムで筋肉質のJシリーズMTBレースを走る選手だった(その姿は思い出せないが…)。

「都会暮らしだと信号が煩わしくて、サイクリングロードに移動するまでがストレス。だから都心の人はバーチャルサイクリングで室内トレーニングやジム通いする訳だけど、私はストレスフリーで走れるルートを苦節5年、開発したんです!!」と難波氏の目に情熱の炎がメラメラ。
アイランドホッピング

引用©️国土交通省「2020東京オリンピック・パラリンピック競技会場周辺のデータ整備」令和2年10月政策統括官付より
このMAPは、2020オリ・パラで国が作成した資料。ウォーターフロントに点在する競技施設を、遊歩道の線で結ぶ。観客は遊歩道を自転車により信号で止まることなくスムーズに移動できる仕組み。
2020オリ・パラのレガシーである施設を並べてみよう。
有明地区
【青海アーバンスポーツパーク】(オリ・パラ会場)
東京都江東区有明1-13-7
オリンピックでは正式種目バスケットボールと追加種目スポーツクライミング、パラリンピックではブラインドサッカーを実施。仮設会場であるため、大会終了後に施設は解体された。
【有明テニスの森】(オリ・パラ会場)
東京都江東区有明2-2-22
オリンピック・パラリンピックのテニスおよび車いすテニスのメイン会場。
【有明アーバンスポーツパーク】(オリンピック会場)
江東区有明1-13-7
BMX(レーシング、フリースタイル)とスケートボードが開催された仮設会場(旧称・有明BMXコース)。大会後は2024年10月にスケートボードやボルダリングを楽しめる複合型施設「livedoor URBAN SPORTS PARK」として全面開業。
【有明体操競技場】(オリ・パラ会場)
東京都江東区有明1-10-1
新体操、トランポリン、パラリンピックのボッチャ会場として使用された仮設施設。
大会後は「有明GYM-EX(ジメックス)」という展示場へ改修。
【有明アリーナ】(オリ・パラ会場)
江東区有明1-11-1
バレーボールのメイン会場。パラリンピックでは車いすバスケットボールの会場。東京の新たなスポーツ・文化発信拠点として活用されている。
お台場地区
【お台場海浜公園】(オリ・パラ会場)
東京都港区台場1-4-1
オリンピックではトライアスロン、水泳(10km マラソンスイミング)。パラリンピックのトライアスロン会場。潮風公園、台場公園、シンボルプロムナード公園と隣接し、大人気の観光・デートスポット。

【潮風公園】(オリンピック会場)
東京都品川区東八潮1-2
バレーボール(ビーチバレーボール)仮設会場。
辰巳・夢の島地区
【東京アクアティクスセンター】(オリ・パラ会場)
江東区辰巳二丁目2-1
水泳(競泳、飛び込み、アーティスティックスイミング)、パラリンピックでは水泳の会場。
【東京辰巳国際水泳場】(オリンピック会場)
江東区辰巳2-8-10
水球競技のメイン会場。

【夢の島公園アーチュリー場】(オリンピック会場)
江東区夢の島2-1
アーチェリー(オリンピック/パラリンピック)の予選会場。
葛西地区

立ち寄り処=レガシー施設では、本格的な用具レンタルでスポーツ体験できる
【カヌー・スラロームセンター】(オリンピック会場)
江戸川区臨海町6-1-1
カヌー(スラローム)会場。大会後はラフティングも楽しめる、周辺の公園や水域と一体となったレジャー・レクリエーション施設。
圧倒的に【有明】に施設が多いが、【お台場】、【辰巳・夢の島】、そして【葛西】の4つの地域を4つの島として見立てれば、そこを結ぶ航路が遊歩道なのだ。
遊歩道や緑道が島と島を結ぶ線であり、自転車でストレスフリーなサイクリング=アイランドホッピングを愉しめる!

ちなみに難波氏の構築したストレスフリールートは、豊洲エリア=15km、有明エリア=10km、東雲エリア=10km、辰巳エリア>10km、若洲エリア=10km、お台場エリア=20km、荒川〜葛西エリア=30kmが実走・精査済みである。
「都会の道は三階建てです」と難波氏が言う。
なるほど、運河沿いの遊歩道は最下層、その上に公園内の緑道が中層、さらに陸地と陸地を結ぶ橋(の遊歩道)が上層なのである。

立ち寄り処=夢の島公園には水爆実験で被曝した第五福竜丸が展示されている
2020オリ・パラ視点とは別に遊歩道を眺めると、「信号のストレスなしに走れる道はさらに探すことができる」そうだ。東日本大震災とセットの遊歩道整備事業により作られ、整備されつつある遊歩道がそれだ。防災と環境保全、地域コミュニティの再生を目的とした“遊歩道・散策路の整備”がセットで実施された事例は非常に多くある。

我々は元々がマウンテンバイク好き。緑ゆたかな公園の緑道とくれば、ざっくりした敷石、露出した土の斜面、木の根が露わになった場所では、ついついボルテージがあがる。もちろん、大人だからヤンチャはしない。でも、こういう山のなかにいるような環境が都心に点在していることに感動。

遊歩道の表面は滑りやすい部分もある。接地面積の少ないハイプレッシャータイヤは要注意!
洞察力が豊かで研究熱心な難波氏は、「東京タワーとスカイツリーを結ぶ信号なしルートだって、階段の担ぎを入れれば可能なはずです」と夢見心地に語る。

立ち寄り処=お台場地区では常に多様なアトラクションが開催されている
自転車通行が禁止されていない遊歩道を活用し、信号レスのサイクリング。
平日のウォーターフロントを7時間ほど、実に気持ちよく走れた。