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2020年あたりから、グラベルロードが流行りですね。少し下火ですがシクロクロスも流行して本格的なUCIレースからユルイ感じのイベント(秋ヶ瀬の森バイクロアなど)まで誕生して盛り上がった。この流れでいちばん気になるのはタイヤです。

最近のロードタイヤは幅広になってきた。ギアの歯数も隔世の感あり。奥は3段、手前13段

ロードバイクなら700×25Cの細めなタイヤに空気を8bar(116psi)くらいカンカンに入れて走るのが当たり前と思う人が多かった。わかっている人は、自分の体重やその日に走る天候・路面状況に応じて空気圧をアレンジする。でも、わかっている人たちでも、シクロクロスやグラベルロードの太いタイヤ、最適空気圧に関しては、「それでいいの?」と疑問を抱くようです。それは、グラベルロード発祥のアメリカでも同様らしく、アメリカ自転車文化を発信するショップRene Herse Cyclesの1月2日付webマガジンには、グラベル神話に迫る1「Too Much Tire?」(タイヤが太すぎないか?)と題する記事があった。

執筆はショップ主宰者であり自ら走って機材を評価し開発もするヤン・ハイネ氏。要約して紹介。

ハイネ氏らテストグループはホイールをEnve45として、グラベルロードの標準的タイヤ幅44mmと28Cをグラベルレース速度の29km/h(18mph)でテストライドした。タイヤはRene Herse Snoqualmie Passと Chinook Pass、どちらも超軽量ケーシング付きだ。テスト条件は無風・一定気温・ライダーのポジションを同一で管理。すると、滑らかな道路では規定の距離を走るには少なくとも44mm幅までは問題なく、他のテストでも幅54mmでもスピードに影響はなかった。

これは房総半島の地道。上って下って時間がすぎてゆく

別の日、でこぼこの道も想定してランブルストリップ(高速道路の端にある窪みで矢筒状になっている部分=ドライバーが車線を逸脱したときに振動で危険を知らせる)と、滑らかな道路を比較して走った。この日のスピードは31km/h(19.3mph)で、パワーメーターを用いて乗った。

——タイヤが6.6bar(95psi)または5.2bar(75psi)に膨らんでいるか否かに関わらず25mm幅タイヤで走るには209wの出力発揮が必要だった。35mmタイヤに交換して3.4bar(50psi)に空気圧をアップしても違いは感じられない(データは幅広タイヤがやや速いが統計的に有意ではない)。

25mm幅タイヤを超高圧で走らせたときに、滑らかな路面から荒れた路面に移行するときに2倍以上(+124%)のパワーを必要としたが、35mmタイヤを適度な空気圧で滑らかな路面から荒れた路面に移行するときには50%以上パワーしか必要としなかった。

でこぼこ道テストでは、25mmタイヤでも空気圧を下げることで82W(17%節約)の踏力でスピードを維持できた。35mmタイヤにして空気圧を下げるとさらに73wまで出力をセーブしてもスピードを維持できた。つまり、25mmの高圧タイヤから35mm幅のタイヤにすれば1/3のパワーで走れた。

自明のことだがほとんどのグラベルロードはランブルストリップほどハードではない。この傾向はさらにタイヤ幅が広がっても続きます。——

現実にハイネ氏が364マイルのバイクパッキングルートであるオレゴン州アウトバック(辺境ラフロード)でFKT(最速既知時間)を設定するために54mmタイヤをわずか1.3bar(19psi)で走ったとき、GPSトラッカーは荒れた砂利とゆるい砂利でも速度差が舗装路スピードの約90%であることを示したそうだ。

54mmタイヤをわずか1.3barで走る、その数値は驚きだし、それでも舗装路スピードの90%をキープできたのは衝撃的だ!

ハイネ氏はこうも書いている。

——わずかでもタイヤ幅が広がればエアボリュームは増大します。42mmタイヤは中央部分で38mmタイヤより11%広いだけですが、エアボリュームは22%増加。より多くのエアボリュームはサスペンション効果を生みライダーへの振動が少なくなる。タイヤ空気圧を下げると、特にスプリントでの反応や感触が変わります。グラベルレースはタイムトライアルではないが、小集団で走っていてスピードアップを図ったりするときは全力疾走するので、より空気圧が高めの硬いタイヤにするのが普通です。

しかし、空気圧とは個人の体力とどんな走りを求めるかにより変わるもの。付け加えれば、幅の広いタイヤで低圧にすると、タイヤのサイドウォールのカットやパンクのリスクが大幅に減少します。グラベルレースで勝利するにはまず、トラブルフリーでフィニッシュする必要があります!——

なるほど、エアボリュームの大きなタイヤは低圧で走ればライダーに負担をかけず、低圧でも転がり抵抗にはそれほど影響がないわけだ。

それにしても改めて気づかされた。

サイクリング車のカタチや概念、変化していますね

キャンプ装備をバイクに積んでアウトバックを走る遊び、それがグラベル文化なのだ。日本だと林道サイクリングかな。グラベルを走るときは冒険心が刺激され、タイム設定を意識して速く走る。長い距離を走るからペースマネージメントを考慮する。機材も、体力のフレッシュ度も、どちらも意識して遊ぶ。

アメリカのグラベルロード遊び、奥が深い。

Post Author: coppi